ダム工事総括管理技術者認定事業 | |||||||||||
平成18年5月1日 | 財団法人 日本ダム協会 | | ダム工事総括管理技術者認定事業事務局 | 記 趣 旨 |
ダムは地点毎に自然環境・水文・地形・地質が異なり、基礎岩盤や材料などに予見不可能なことも多い。堤体と基礎岩盤は強大な荷重や水圧に耐える強度や安定性、水密性、耐久性を要求され、ダム構築後はその内部の修復は困難である。設計が意図する品質は厳密なコンクリートの品質管理など高度の施工管理のもと、施工段階で造り込むことを要求される。水と自然を相手に治水・利水の安全と便益をもたらす最重要の構造物を造るダム技術は、総合性と厳密性を要する固有で特徴的な技術である。 | ダム工事は大規模で複雑な重要構造物を構築する総合工事であり、他の大規模土木工事と比較しても、転流工、原石採取工及び骨材、コンクリ−ト製造設備等の仮設備の施工に極めて高度な技術力を要する。近年、RCD工法、ELCM等合理化施工法の改良・進展、CFRD、CSGなどの新技術の導入、地質条件の多様化等に対応した技術開発により施工技術が向上してきた一方、公共事業投資削減の動向の中、堤体及び基礎の設計・施工、施工設備、材料その他について一層のコストダウンが要請されている。 ダムサイトの条件等を適切に配慮した設計に従いダムの安全等の品質と機能を施工の場で造り込むためには、設計理念への理解力と企画・判断力、最適な施工計画・施工設備立案能力、錯綜する工種・工程を調整して施工する豊富な経験に裏付けられた高度の技術力と施工管理能力が、また、地震や洪水など如何なる事態が発生しても適切に対処できる危機管理能力が必要である。他方、地球環境保全や生態系の保護の要請も強まり、ダム工事の廃棄物の最小化やリサイクル、有効利用など、ダム工事が直面する課題は非常に複雑になっており、地域社会との融和や自然環境保全などに対応する実務能力も不可欠である。 このような状況の中で、ダム工事の元請け施工者の責任技術者として、所定の品質のダムを経済的、効率的かつ安全に建設する豊富な経験と高度の技術力及び技術者倫理を保持し、部下を督励して適正かつ円滑にダム工事を遂行し、現場事業所経営も含む総括的管理業務を司る技術者がダム工事総括管理技術者であり、ダム工事の発注者及び施工者の双方からこのような技術者の確保が求められている。 |
要 綱(案) | |||
1.目的 | |||
財団法人日本ダム協会(以下、「協会」という。)は、ダム工事の高度の技術力及び技術者倫理を保持し、品質と経済性に優れたダムを効率的かつ安全に建設するダム工事の総括的管理業務を司る技術者を養成し、もって施工者のダム技術者の知識及び技術の向上を図ることを目的として、ダム工事総括管理技術者の認定に係る審査、合格者の登録、証明その他必要な事業を実施する。 | |||
2.審査の方法 | |||
ダム工事総括管理技術者の認定に係る審査等を次のとおり実施する。 | |||
(1) | 1次審査 | ||
ダム工事に関する基礎的知識・技術に関して筆記試験を実施する。 筆記試験は多肢択一式試験と小論文試験により行う。 | |||
(2) | 面接試験 | ||
「ダム工事技術者特別研修」を終了し、小規模ダム工事総括管理技術者で現場実務経歴十分な者については、1次審査に代えて現場実務経験に関する小論文の審査と面接試験を実施する。 | |||
(3) | 2次審査 | ||
ダム建設工事の専門的知識・技術に関して論文試験及び口頭試験を実施する。 | |||
1) | 論文試験 | ||
コンクリートダム及びフィルダム両型式のダム工事について、設計・施工条件に基づく施工計画の考え方、知識・技術を審査する。 | |||
2) | 口頭試験 | ||
コンクリートダム及びフィルダム両型式のダムについて施工計画の着眼点・留意点、施工技術及び施工管理等の内容に関して審査する。 | |||
3.審査の実施 | |||
(1) | 審査等に当たり、審査委員会を設ける。 | ||
1) | 審査委員会委員は、学識経験者、ダム事業の関係機関等の役員・職員等のうちから、財団法人日本ダム協会会長(以下、「会長」と言う。)が委嘱する。 | ||
2) | 委員の定数は15名以内とし、任期は2年とする。ただし、再任を妨げない。 | ||
3) | 審査委員会委員長は委員の互選により選出する。 | ||
4) | 審査委員会は委員長が招集する。 | ||
5) | 審査委員会の権能は次のとおりとする。 @ 認定事業の実施方針・実施計画等の決定 A 認定に係る審査等の資格要件の審査 B ダム工事総括管理技術者の資格認定 C その他審査等に関する重要事項の審議・決定 | ||
(2) | 審査委員会の下に試験問題作成幹事会を設ける。 | ||
1) | 試験問題作成幹事会幹事は関係機関等の職員のうちから会長が委嘱する。 | ||
2) | 幹事の定数は8名以内とし、任期は2年間とする。ただし、再任を妨げない。 | ||
3) | 幹事会の長は幹事の互選により選任する。 | ||
4) | 幹事会は試験問題作成の企画・検討、問題案の作成等の事務を行う。 | ||
4.合格者の決定及び資格認定 | |||
審査委員会は合格者の決定及び資格の認定を行う。 | |||
(1) | 1次審査、面接試験、2次審査の合否基準は次のとおりとする。 審査委員会は毎年の審査の成績、試験問題の難易等を勘案し、具体的な合否基準を定めて判定する。 | ||
1) | 1次審査 ダム工事に関する基礎的知識・技術を保持していると認められること | ||
2) | 面接試験 ダム工事全般に亘る知識・技術と、施工者のダム工事事業所の責任技術者としての十分な能力を保持していると認められること | ||
3) | 2次審査 ダム建設工事の専門的知識・技術に関して論文試験及び口頭試験の成績が優秀であり、所定の品質のダムを経済的、効率的かつ安全に建設するために必要な高度の技術力と技術者倫理を保持し、施工者のダム工事事業所の責任技術者として部下を督励して適正かつ円滑にダム工事を施工し、現場事業所経営も含む総括的管理業務を司ることができること | ||
(2) | 審査委員会は2次審査合格者をダム工事総括管理技術者として認定する。 | ||
(3) | 合格者は、協会の機関誌及びホームページ等で発表する。 | ||
5.現地研修 | |||
モデルダム現地において設計・施工技術の実地指導及びダム工事総括管理技術者が知悉しているべき事項を教授するため、合格者を対象に現地研修を実施する。 現地研修は義務とし、その修了を登録の要件とする。 | |||
6.称号の付与、登録及び証明 | |||
(1) | 会長は、認定に係る審査等に合格し、現地研修を修了した者について「ダム工事総括管理技術者(Certified Chief Managing Engineer for Dam Construction )」の称号を付与し、登録原簿に登載し、認定証及び登録証明書を交付する。 | ||
(2) | 登録の有効期間は5年とし、登録更新に当たっては知識・技術の維持のための措置を講ずるものとする。 | ||
7.合格者の知識及び技術の維持のための措置 | |||
(1) | 会長は登録後5年を経過した者に対し、知識及び技術の維持のための講習会を開催するものとする。 | ||
(2) | 会長は講習会を受講した者について、登録を更新する。 | ||
8.経過措置 | |||
(1) | 小規模ダム工事総括管理技術者の登録更新は、7.に準じて実施する。 | ||
(2) | 小規模ダム工事総括管理技術者を対象とする研修は平成19年度以降に実施する。 | ||
実施要領(案) | |||
ダム工事総括管理技術者認定事業(以下、単に「認定事業」と言う。)で実施するダム工事総括管理技術者の認定に係る審査(以下、単に「認定試験」と言う。)の実施方法等について、次のとおり定める。 | |||
1.試験の実施回数、時期、場所 | |||
(1) | 実施回数 | 毎年1回 | |
(2) | 実施時期 | 1次審査、面接試験:5月〜6月 2次審査:7月〜10月 | |
(3) | 実施場所 | 1次審査、面接試験:東京都内 2次審査:東京都内 | |
2.受験者の要件 | |||
(1) | 1次審査の受験者 | ||
@ | ダム工事の元請け施工者現場事業所の職員としての実務経験10年以上の者で、一級土木施工管理技士又は技術士(建設部門)の資格を有する者 | ||
A | 審査委員会が@と同等以上の知識及び技術を有すると認める者 | ||
この認定試験で言うダム、ダム工事及び実務の経験等の定義は次のとおりとする。 | |||
【ダム、ダム工事】 | |||
イ. | ダムとは、堤高15m以上の貯水用の施設とする。 堤高15m未満の堰、砂防ダム、鉱滓貯留堰堤、海中ダム、塵芥処分場のコンクリート擁壁など技術体系が異なるものはこの認定事業で言うダムには該当しない。 | ||
ロ. | ダム工事とは、コンクリートダム又はフィルダムの堤体本体工事を言う。 堤体工事と原石採取・骨材製造工事(フィルダム工事にあって材料採取製造・運搬工事)が分離発注されたダムにおいては、原石採取・骨材製造・運搬工事もダム工事に含むものとする。 仮排水路工事、トンネル工事、道路工事、発電所工事、ゲート設備工事その他の付帯工事や関連工事は、この認定事業でいうダム工事に該当しない。 | ||
【実務の経験】 | |||
実務の経験とはダム現場の従事経験を言い、本支店等の内勤、関係機関等への出向等に係る業務は、原則として実務の経験の期間に含まない。 | |||
(2) | 面接試験の受験者 | ||
@ | 協会が平成14〜17年度に実施した「ダム工事技術者特別研修」を修了した小規模ダム工事総括管理技術者であって、イ.ダム工事経歴3ダム以上、ロ.経験年数15年以上、ハ.現場代理人・主任技術者・監理技術者等責任技術者・その他幹部技術者のいずれかの経歴があることの、イ〜ハの全てに該当する者 | ||
A | 小規模ダム工事総括管理技術者で10年以上のダム現場経験を有し、協会が平成14〜17年度に実施した、又は19年度以降に実施する予定の「ダム工事技術者特別研修」を修了した者 | ||
(3) | 2次審査の受験者 | ||
@ | 1次審査合格者 | ||
A | 面接試験合格者 | ||
B | 次に示す1次審査を免除する者 | ||
イ. | 平成18年度以降の2次審査で不合格の判定を受けた者 ただし、不合格の判定を受けた年度の次年度以降3年以内に限る。 | ||
ロ. | 平成13〜17年度の審査でいずれか一型式の資格のみ取得した者(合格年度から2次審査再受験までの年限は問わない。ただし、2次審査を再受験して不合格と判定された場合は、その後の再受験は不合格となった年度の次の年から3年以内に限る。 | ||
ハ. | 平成15〜17年度の審査で二型式に不合格判定を受けた者(2次審査再受験は、不合格判定年度の次の年から3年以内に限る。) | ||
3.試験の方法 | |||
(1) | 1次審査 ダム工事事業所を開設し、適正かつ円滑にダム工事を施工するに必要な法規等の知識並びにダム設計・施工技術、施工計画及び施工管理に係る基礎的知識・技術について多肢択一式試験問題及び小論文試験を行う。 | ||
(2) | 面接試験 ダム工事遂行に必要な管理者としての能力を、小論文と面接試験により問う。面接試験受験者は、審査委員会が指定する事項の中から2項目選定して具体的なテーマを設定して現場実務経験に基づき、字数1200字以内の小論文2点を面接試験に先立ち提出するものとする。 | ||
(3) | 2次審査 | ||
@ | 論文試験 コンクリートダム及びフィルダム各一カ所について、当該ダムの設計・施工の付与条件及び付属図面を提示し、これに基づき品質、工期短縮及び経済性を実現する施工計画・施工管理の考え方の論文を作成させ、審査する。 | ||
A | 口頭試験 論文審査結果に基づき、その着眼点及び留意点の考え方や問題点等に関して口頭試験により審査する。 | ||
論文試験及び口頭試験を通じて、ダム工事総括管理技術者としての技術力と企画力・判断力、道義規範、説明力等を審査する。 | |||
(4) | この認定事業の審査・試験等は日本語により行う。 | ||
4.合格者の決定及び資格認定 | |||
(1) | 合格者の決定 1次審査、面接試験、2次審査の合否基準は次のとおりとし、審査委員会で具体的な合否基準に基づき判定する。 | ||
1) | 1次審査 筆記試験及び小論文試験の成績が優秀であること | ||
2) | 面接試験 ダム工事全般に亘る法規等の知識、設計・施工技術、施工計画作成及び施工管理に係る知識・技術など、施工者のダム工事事業所の責任技術者としての能力を保持していると認められること | ||
3) | 2次審査 コンクリートダム及びフィルダム両型式のダム工事施工計画に関する論文が優秀であり、所定の品質のダムを経済的、効率的かつ安全に建設するために必要なダム工事全般に亘る高度の技術力と技術者倫理を保持し、施工者のダム工事事業所の責任技術者として部下を督励して適正かつ円滑にダム工事を施工し、現場事業所経営も含む総括的管理業務を司ることができると認められること | ||
(2) | 審査委員会は2次審査合格者をダム工事総括管理技術者として認定する。 | ||
(3) | 合格者は協会の機関誌及びホームページ等で発表する。 | ||
5.現地研修 | |||
モデルダム現地において設計・施工技術の実地指導及びダム工事総括管理技術者が知悉しているべき事項を教授するため、合格者を対象に現地研修を実施する。 現地研修は義務とし、その修了を登録の要件とする。 | |||
6.称号の付与、登録及び証明 | |||
(1) | 会長は、認定に係る審査等に合格し、現地研修を修了した者について「ダム工事総括管理技術者(Certified Chief Managing Engineer for Dam Construction )」の称号を付与し、登録原簿に登載し、認定証及び登録証明書を交付する。 | ||
(2) | 登録の有効期間は5年とし、登録更新に当たっては知識・技術の維持のための措置を講ずるものとする。 | ||
7.合格者の知識及び技術の維持のための措置 | |||
(1) | 会長は登録後5年を経過した者に対し、知識及び技術の維持のための講習会を開催し、講習会を受講した者について、登録を更新する。 | ||
8.経過措置 | |||
(1) | 会長は小規模ダム工事総括管理技術者の登録更新は、7.に準じて実施する。 | ||
(2) | 小規模ダム工事総括管理技術者を対象とする研修は平成19年度以降に実施する。 | ||
9.試験等の手数料 | |||
(1) 1次審査、面接試験受験料 25,000円(消費税別。以下同じ。) (2) 2次審査受験料 150,000円 (3) 現地研修料 100,000円 (4) 登録料 30,000円 (5) 2次審査再受験料 50,000円(一型式再受験の場合) 100,000円(二型式再受験の場合) (6) ダム工事総括管理技術者登録更新料 25,000円(講習会受講料10,000円を含む。) (7) 小規模ダム工事総括管理技術者登録更新料 10,000円 | |||
10.付則 この実施要領案は平成18年5月1日から実施する。 | |||