第13回 日本ダム協会ホームページ 写真コンテスト
"D-shot contest"
入賞作品および選評


各委員の全体評

第13回D-shotコンテストは、282点の作品応募がありました。これらの作品を対象に最優秀賞、優秀賞、入選作品の選考を、平成28年2月25日に日本ダム協会にて行いました。
その結果、今回は下記の作品が選ばれました。



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最優秀賞
「大きい・・・」
岡山県・新成羽川ダム
撮影者:kaiyu
<選評・西山 芳一>
  ダムの魅力の一つにその「大きさ」があります。写真で土木構造物などの規模を表現するには見慣れたサイズ感を持つもの、例えば人物や自動車を入れ込ませることによって比較させることが大事です。この作品には見逃しそうですが下部に白いヘルメットを被って見上げる人物を配置しています。ほかにアングル、質感表現ともに秀逸でダムの魅力を素直に表現できたダム写真コンテストにおける原点復帰的な作品と言えるでしょう。





「ダム本体」部門

優秀賞
「ぬめる迷宮」
秋田県・松倉ダム
撮影者:kazu_ma
<選評・西山芳一>
  まず美味しそう!まるで有名なパティシエの作ったカットケーキを並べて撮影したように見えますね。でも、実際の香りというか匂いや苔のぬめりを想像すると吐き気をもようしてくるのは私だけでしょうか? 確かな技術で汚いものを美しく撮りすぎてしまったそのギャップがこの作品の素晴らしさかもしれません。醜を美にしてしまう罪深い写真ですが、写真コンテストですから許されますね。


入選入選
「清涼感」
岡山県・鳴滝ダム
「輝く水紋様」
兵庫県・大日川ダム
撮影者:小南宣広 撮影者:声姫
<選評・西山芳一>
  堤体とふたつの違った流れ、画面を横に三分割した面白い作品です。惜しむらくは横の三本の線が微妙に平行になっていないこと。特に堤頂が斜めになってしまいました。ちょっとカメラを左に振るか、位置を右に寄れば済んだのかな。撮影しているときに線を揃えるのは大変ですが、結果的には気になりますので頑張りましょう。三脚と水準器がオススメ。狙いは非常に良いと思います。
<選評・窪田陽一>
  コンクリートの堤体の前面を這うように流れ下る水は、堤体表面の粗さと傾斜、落水と大気のせめぎ合う気流に挟まれて波立ち、まさしく水紋様を描きます。不揃いな束に分かれて流下する水が描く模様は、堤体頂部のほんのわずかな凹凸が差配する水の妙技と言えるものですが、それこそ方円の器に従う水の正直な姿に他ならず、万物に遍く受け継がれる天然の計略がそこに秘められています。手前にある橋の下方に流れ落ちる水紋様がどのような様相を呈しているのか、見てみたい気がします。


入選入選
「ザ・バットレス」
群馬県・丸沼ダム
「黄昏の龍ヶ鼻」
福井県・龍ヶ鼻ダム
撮影者:小倉佑一 撮影者:小倉佑一
<選評・西山芳一>
  波ひとつない湖に浮かぶボートからバットレスダムの格子を水面に映すことによる上下と左右を対象?に撮影した作品。全体にブルーがかった色彩と微妙に左右が対象でなく歪んで見える格子が、山奥の湖に独り浮かんでいるような不安感とボートから落水しそうな不安定感をつのらせます。本意かは分かりませんが、大量の水を薄い壁とバットレスだけで支えているというこの形式のダムが持つ一面をうまく表現できた作品です。
<選評・窪田陽一>
  暗闇迫る黄昏(たそがれ)に静かに包まれ始めた周囲の山々に囲まれながら、白銀(しろがね)のように輝いて鎮座するダムの佇まいは、天啓の到来を告げる使徒の面持ちさえ感じます。モノクロームのような色調ですが、微妙な明るさが残っている時の陰影が淡い色調を伴いつつ手前の山肌にあれば、ダムや背景までの奥行きがより深く感じられたかも知れません。




「ダム湖」部門

優秀賞
「新緑の塊」
福島県・下北沢ダム
撮影者:浜津威彦
<選評・窪田陽一>
  一見、単純な構図の眺めに見えますが、木々に繁るモノクロームのような諧調の葉叢に気付く時、視線は繁みの奥へと導かれていきます。森の厚みとも言える奥行き感は、所々に捉えられている色調の階差により生み出されています。深みを感じさせる仄暗(ほのぐら)い湖面が影のように森を支え、大気と水の接点を寡黙に演出しているようです。大地を包み込む樹林の静謐に包まれた新緑の目覚めが見事にとらえられています。


入選入選
「水鏡」
岐阜県・下原ダム
「群青(ぐんじょう)」
埼玉県・山口貯水池(狭山湖)
撮影者:声姫 撮影者:しまじろう
<選評・窪田 陽一>
  完全な無風状態に出逢う確率は極めて低いと思われますが、幸運に恵まれた作者はほぼ無風に近い天象との出逢いを逃しませんでした。平らかな水面(みなも)が鏡のように対岸の山肌を映しとり、水辺に被さる桟道の小刻みな歩幅は、水門(?)の間合いへの序奏にも見えます。ほんの僅か視軸を下げて、倒立した姿の山並みの全容が湖面に映り込むように捉えていれば、上下の対称性が際立ったかもしれません。
<選評・窪田 陽一>
  湖面に群れる細波(さざなみ)が対岸の山影と棚引く叢雲(むらくも)を映し取り、彼方に鎮座する霊峰富士の高みに視線を誘います。青空と一口に言いますが、実際の色調は決して均一ではありません。菫色に見える時もあれば、青灰色に映る時節もあります。肉眼で見えた色調と写真が捉えた色合いが異なることも珍しくありません。逆光の中に浮かび上がる空と雲、遠い山並み、湖水の全てが同じ色調に包まれる瞬間に気付いた作者の眼差しを高く評価すると共に、他の色調が現れる刹那に出逢うことを祈りたいと思います。





「工事中のダム」部門

優秀賞
「着々と」
広島県・庄原ダム
撮影者:小南宣広
<選評・森 日出夫>
  まさしくダム工事の最盛期を切り取った一枚です。夜間、大型クローラクレーンでコンクリートを打設している様子が生き生きと写し取られています。周辺の暗闇の中で、打設現場だけが煌々と照らされ、バケットから放出されるコンクリートを男たちが待ち構える様は、見る者に現場の緊張感を伝えます。

優秀賞
「深まる紅葉進む工事」
群馬県・八ッ場ダム
撮影者:かみさと
<選評・森 日出夫>
  深まる秋の深夜、工事現場だけがボワッと浮かび上がる幻想的な写真です。大型ダム工事である八ッ場ダムでは、堤体基礎掘削、仮設備設置工事を昼夜通して実施しています。この暗闇の中で、おそらく100人以上の人が広範囲に分かれて働いているのでしょう。夜間作業のこの写真から、ダム現場の広さが改めて実感できました。


入選
「虚実のはざまにみた潤いある未来A」
青森県・津軽ダム
撮影者:鈴木 篤
<選評・森 日出夫>
  減勢工のエプロンに薄く水が張られていて、そこに堤体がキレイに写りこんだ珍しい写真です。津軽ダムの堤体打設は天端まで完了しており、減勢工のエプロン幅が広い、あとこれが一番大事なのですが、エプロンの施工精度が非常に高いということで、このような写真が撮れました。私は、ウユニ塩湖を思い浮かべましたが、いかがですか。




「ダムに親しむ」部門

優秀賞
「ダムと花火と露天風呂」
岡山県・湯原ダム
撮影者:小南宣広
<選評・中川 ちひろ>
  ダムって大きくて力強くて、すさまじい迫力があるものだと思うのですが、その存在感をさえ弱めてしまう、この花火。写真は自分の好きなところで切り取り、自由に画づくりができる面白さがありますが、これはまさに切り取るセンスがものを言う一枚ですね。縦位置で撮影したのは大正解だと思います。大胆な構図で画面ギリギリに花火を広げて見せることで、ダムって本当に大きいの? と思わせてしまう、とても面白い一枚です。


入選入選
「楽しいサップ」
三重県・宮川ダム
「迫力の放流」
広島県・温井ダム
撮影者:3cann4on 撮影者:榊 正博
<選評・中川 ちひろ>
  まさかまさか、これがダムで撮影された写真だと、一体誰が思うでしょうか。どこかの綺麗な川で、夏休みに家族で遊びに行って撮った一枚。そんなふうに見えます。一見するとごく普通のスナップ写真のようにも見えますが、立っている人と座っている人のバランスや写真前面の空間の取り方など、実はよく考えられています。写真はちょっとしたことで、見る人が「いいな」と感じるものなので、シャッターを押す前にひと息ついて、少しだけ考えてみるのもいいですね。
<選評・中川 ちひろ>
  気持ちのいい写真ですね〜。よく晴れた、真っ青な空となんだか美味しそうな白い二本の放流の様子。私もあの放流の前で写真を撮りたいものです。画面の8割が灰色のコンクリートで占められているのに、重苦しい印象はまったくないし、むしろとても軽やかなイメージを持たせるのは、小さく写った人物がちりばめられているからですね。写真右側の坂を駆け下りる女性も効果を上げています。細部まで見たくなる、笑い声が聴こえそうな、とても楽しい写真です。




「テーマ」部門 『風』

優秀賞
「青と緑の揺らぎ」
秋田県・八塩ダム
撮影者:kazu_ma
<選評・宮島 咲>
  ダム湖の入り江で良く見かける風景ですが、樹木の葉の揺れ具合と、湖面のさざ波から「風」を感じる作品です。撮影日は春でしょうか。東北のダムですから5〜6月頃でしょうか。心地よい風が吹き、快適な様子が写真から伝わってくる作品でした。もし、この作品をダム湖部門として応募したら、これといって目を引かない作品になっていたかもしれませんが、テーマを持って拝見すると、風という目に見えないものを十分に感じることができるものだと感じました。


入選入選
「水カーテンが揺れる」
栃木県・川俣ダム
「地吹雪の向こう側」
宮城県・川原子ダム
撮影者:糸賀 一典 撮影者:kazu_ma
<選評・宮島 咲>
  川俣ダムの堤体下流に架かる吊り橋から減勢工を撮った写真ですね。右からの放流はハウエルバンガーバルブからのものでしょうか。左からの発電用放流の水と共に、湖面に着水するまでの間に風に流されカーテンの様に広がりを見せています。その様子は、湖面にたった白波が物語ってくれています。また、紅葉をアクセントに入れたのも大きなポイントだと思います。青系の単調な色彩が引き締まり、水流を強調してくれている様に見えます。
<選評・宮島 咲>
  優秀賞の「青と緑の揺らぎ」と同様に、アースダムを写した作品です。宮城県にあるダムで、この写真が冬の東北地方の厳しさを物語ってくれています。手前に見える橋は導流部にかかる橋で、その奥に堤体が見えます。ものすごい地吹雪の中になぜか現れた虹が、とても幻想的な雰囲気を醸し出しています。この作品で感じた風は、肌を凍てつかせる寒冷地の強風です。この作品は「青と緑の揺らぎ」と同一の作者ですが、こんなに表情の違った風を見せてくれるのだと感心しました。


特別賞

「巨樹」
石川県・神子原ダム
撮影者:田中 創
<選評・宮島 咲>
  この作品を見た瞬間、いったい何を意味しているのか分かりませんでした。「緑生い繁る大きな樹木を撮った写真」、ただそれだけに感じました。しかし、じっくり見てみると、なんとも味わい深い作品ではありませんか。この作品は意図的に90度傾けられたものなのです。よく見ると、垂直に湖面のラインが走っています。ダム湖の水鏡に映る地上の草たちと、リアルな草たちが見事に調和し、大きな樹木を形作っています。作者の発想力に感服した作品でした。




全体評


審査委員プロフィール
西山 芳一 (土木写真家)

  今回は数こそさほど増えてはいませんが、ダムをいろいろな見方をした作品が多くなったなという印象です。特に応募数の多い「本体」部門では、選考のために多数の作品を机に並べた時のパット見、全体として見ると色といい形といい「今年は期待できる!」と喜びましたが、いざ一枚一枚を丁寧に見ると「これっ!」という群を抜いた作品がないのです。全体として一応に技術のレベルが上がってきたことの現れかも知れません。狙いの方向性は間違っていないと思います。技術的にももう少し、シャッターチャンスへの粘りももう少しですので、次回ももう少し頑張ってみてください。
窪田 陽一 (埼玉大学大学院理工学研究科教授)

  期待に違わず、今回も多数の力作が集まりましたが、審査員による投票が割れそうな場面もあり、作風が多様化したかとも思いました。常連の作品だけでなく、新規に応募された佳作も多数目にとまりました。また、今回初めて設けられテーマ部門では「風」という御題が掲げられ、審査員一同期待を寄せつつ、時間をかけて審査に当たりました。ダムの周囲を取り巻く大気の流れは、その力で動かされるものを媒介として見えるのであり、不動の被写体を撮る時とは一味も二味も異なる感性と技量が求められると思います。他の部門でも着眼点が似ている作品がありましたが、従来の応募作品には見られないような苦心作が生まれる契機となったことは確かなようです。
宮島 咲 (ダムマニア&ダムライター)

  前回の応募総数231作品を上回り、今回は282作品が寄せられた第13回日本ダム協会ホームページ写真コンテスト。ここ数年は応募数が横ばいでしたが、今回は前回の2割増しである50作品の増量となりました。その理由を想像するに、近年、ソーシャルネットワークなどを通じたダム団体がいくつも誕生したり、ダムカードを通じてダムファンになった人々が多くなったことだと考えています。これは大変喜ばしく、この現象が今後も続いてゆくことを期待してやみません。
 さて、今回から登場したテーマ部門。今回の御題は「風」でした。1年ほど前、審査委員でテーマを決めたのですが、「風」というテーマは難しすぎるのではないかという意見が多数でました。しかしながら、蓋を開けてみると、テーマ部門の応募総数は29作品。この数は、ダム本体部門、ダム湖部門に続き3番目に多い数です。そして、寄せられた作品をひとつひとつ拝見してゆくと、どれもしっかりと風を感じる作品ではないですか!ダム湖のさざ波の写真や、風になびく放流水の写真、そして、堤体の前を泳ぐ鯉のぼりの写真など、色々な表現で風を感じることができました。これらの作品を拝見することができ、とてもうれしく思いました。
 また、今回はいつも入選、入賞するかたの作品が選ばれなかったことも大きな変化でした。その理由は定かではありませんが、逆に言えば、他のかたたちの作品レベルが向上したということにつながるかと思います。
 来年もテーマ部門は存続すると思いますので、ぜひご応募いただければ幸いです。
中川 ちひろ (編集者)

  今回は驚きました。全体的にレベルが格段に上がっており、純粋な写真として楽しめる作品が多くありました。ダムと聞かなかったら、「日本の名景?」と思ったかもしれませんね。色彩、バランス、切り取り方など、よく画づくりが考えられていて、皆さん丁寧な撮影をしているのだなと感じました。いっぽうで、偶然カメラにおさめられた写真は、見る人に素直な感動を与えます。「あ、いいな」と思った瞬間に切り取られたカットはやはり伝わります。考えて撮った写真と偶然撮れたであろうもの。そのどちらを取っても今回は、魅力的な写真が多く、審査会の様子はまるで風景写真の展覧会のようでした。楽しませていただきありがとうございました!
森 日出夫 (ダムネット運営委員会委員長)

  ダム技術者の代表として参加している者としましては、やはりダムの雄大さ、機能美、自然に溶け込んだ美しさ、孤高感のある佇まい等のストレートな魅力を全面に出した作品を期待してしまいます。今回の作品の中にも、いくつか心躍らされるものがありまして、楽しい選考会となりました。今現在、施工中のダムは全国で30箇所以上あります。「工事中のダム」部門でも、全体を捉えるか、部分を切り取るか、人を中心に据えるか等、切り口を変えれば多くのバリエーションがあります。現場見学も兼ねて、どんどん作品を提供して頂ければ、このコンテストもさらに活気付くと思いますので、ご参加の程、よろしくお願いします。

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